がん電話相談 27年前に乳がん、手術経て再々発 目標は「いい状態で長生き」
がん電話相談 27年前に乳がん、手術経て再々発 目標は「いい状態で長生き」
産経新聞
がん患者やその家族が悩みを寄せる「がん電話相談」。今回は27年前に乳がんを発症し、再々発が判明した70代女性の相談に、がん研有明病院院長補佐で乳腺内科部長の高野利実医師が答えます。
--平成8年に乳がんで左乳房を全摘出し、わきの下のリンパ節も郭清(かくせい)(全て切除)しました。術後に化学療法(抗がん剤)を受け、ホルモン療法を約4年間内服しました。
「再発を防ぐための術後薬物療法ですね。リンパ節転移があったため化学療法をし、ホルモン受容体陽性でホルモン療法も行ったのかと想像します。どんな薬剤を使ったのかは、分からないのですね」
--はい。27年も前で忘れてしまいました。手術から12年後、左胸の皮膚にしこりが見つかり手術で摘出し、放射線治療も受けました。さらに11年たった令和元年10月に肺転移が見つかりました。気管支鏡検査で乳がんの肺転移と分かり、手術は行わず、薬で治療することになりました。使ったのはホルモン療法のレトロゾール(商品名フェマーラ)と分子標的治療薬のアベマシクリブ(同ベージニオ)です。この治療が効いて3年以上落ち着いていましたが、今年3月にCT検査で左肺門リンパ節や肝臓、骨に新たな転移が見つかり、ホルモン療法をフルベストラント(同フェソロデックス)に変更。しかしあまり効いていないということで、アベマシクリブとともに治療が中止となりました。まもなく別の治療を開始するようです。
「体調はいかがですか」
--治療を中止してからは下痢や腹痛などがなくなり、食欲も出てきて普通に生活できています。
「アベマシクリブの副作用が抜けてきたのですね。がんによる症状はあまりなく、切羽詰まったような状況ではなさそうです。次の治療として、どんな選択肢が提示されていますか」
--担当医からは「効果が高いが副作用も強い薬」か「効果は低く副作用も少ない薬」のどちらかを選ぶようにといわれています。薬剤名は聞いていません。
「効果や副作用が強いか弱いかは個人差もあり、やってみないと分からないため、そういう曖昧(あいまい)な説明で判断するのは難しいですね。副作用が強く出る可能性があるけれど効果が期待できる薬は化学療法のことかもしれませんが、まずは薬剤名や起こりうる副作用の内容について、きちんと説明を受けるのがよいと思います。効果がなくても副作用がないことを希望するのであれば、無治療で経過観察するという選択肢もあります。薬剤の選択肢もたくさんありますが、それぞれのプラス面(効果)とマイナス面(副作用)のバランスを慎重に評価して判断することが重要です」
「そうした判断をするためには治療目標を明確にして、担当医とも共有しておく必要があります。治療目標として私がよく言うのは『いい状態で長生きすること』です。目標に近づくにはどの治療を選ぶとよいのかと考えるわけです。選択した治療を開始したあとも、実際にマイナス面を上回るだけのプラス面が得られているのか、きちんと評価していくことが重要です。担当医ときちんと話し合って、納得しながら治療を進めてください」
■相談をお寄せください
「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は、毎週月~木曜日(祝日除く)、午前11時~午後3時。9月18日は「敬老の日」のため休みます。
治療にまつわる副作用の悩みも受け付けます。
電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談は無料で、最初にカウンセラーが対応します。医師相談を希望する場合はカウンセラーにお伝えください。対応可能な内容には医師が回答し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されます。個人情報は厳守します。
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