がん患者の最後の希望「光免疫療法」の保険診療が開始 腫瘍が縮小? すでに受けられる病院は5
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がん患者の最後の希望「光免疫療法」の保険診療が開始 腫瘍が縮小? すでに受けられる病院は
多額の私財を投入
光免疫療法の開発には、小林氏を筆頭に多くのがん研究者や医師が関わっている。だが、資金面で最大の援助をしてきたのは、実父のがんをきっかけに小林氏と出会ったという楽天メディカルの会長兼CEO・三木谷浩史氏(56)だ。私財だけですでに数百億円という巨額の資金を投入している。 三木谷氏が言う。 「私が小林先生と出会ったのは2013年。まだマウスの実験しかしていない頃でした。『あれから8年でよくここまで来た』と評価してくれる人もいますが、個人的にはぜんぜん遅いと思っています。もちろん、人命がかかっていますので慎重にならざるを得ませんが、気持ちとしてはもっとスピードアップさせたい。将来的には、虫歯を治療するみたいに気軽にがんを治せるようにしたいんです」 気軽に、という意味では実際の治療費も気になる。 現在、光免疫療法の費用は薬代だけで約400万円かかる。決して安くはない。だが「高額療養費制度」を使えば、例えば69歳以下の自己負担の月額上限は、年収により3・5万円から高くても30万円程度となる。年収が500万円程度の人なら13万7千円ほどだ。医療の進歩により国庫がパンクしかねないという懸念もあるが、今後、適用拡大等により、政府が定めた基準以上の市場規模になれば、薬価がもっと下がっていく可能性もあるだろう。 今もっとも懸念されるのは、「光免疫療法」という言葉が一人歩きを始めていることかもしれない。 がん患者やその家族は、一日千秋の思いで光免疫療法の適用拡大を待っている。だが、研究の最前線に立つ小林氏は「現時点では、自分が受けられる標準治療を優先してください」と念を押す。がんに立ち向かうには今受けられるベストな治療を選択することだ。
しかし、ネットで検索すれば、患者の気持ちを弄(もてあそ)ぶかのように、「光免疫療法」を標榜するクリニックのサイトが数多くヒットする。しっかり頭に入れておいてほしいのは、現時点では、掲載の表にない施設で、保険が利かない自由診療で行われている光免疫療法はすべて“ニセモノ”だということ。もっともらしい御託を並べて、高額な治療費を騙し取ろうとする悪徳クリニックである。 このあたりの情報整理の今後の旗振り役は、光免疫療法に関するライセンスを独占的に有している楽天メディカルにも期待したい。 光免疫療法は多くの可能性を秘めた治療法である。今後、対応できるがん種が次々と拡大されていけば、医師や病院からも見放されてしまったような“がん難民”にとっても大きな希望の光となるに違いない。 現在は、日本に続き、アメリカ、台湾などの国々で臨床試験が進んでいる。光免疫療法を待ち望む人たちが世界中にいる。 芹澤健介(せりざわけんすけ) ライター。1973年、沖縄県生まれ。横浜国立大学卒。編集者、構成作家として活動し、NHK国際放送の番組制作にも携わる。著書に『コンビニ外国人』、『血と水の一滴 沖縄に散った青年軍医』、『死後離婚』(共著)など。 「週刊新潮」2021年7月15日号 掲載
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